今回ご紹介する作品は、凪良ゆうさんの作品【
流浪の月】です。
2022年には広瀬すずさん、松坂桃李さん出演で映画化されることも決定しています!
監督は「怒り」や「悪人」で有名な李相日さん、撮影監督は「パラサイト 半地下の家族」のホン・ギョンピョさんが携わっており、映画の完成度も期待できますね!
ある誘拐事件をキッカケに世間から被害者と呼ばれる女の子と、犯罪者と呼ばれる青年。
世間は可哀そうな自分をつくりあげるが、本当の自分はそうじゃない。
自分たちが世間や常識の外側にいたら?
周りとはちがう自分に悩んでいるあなたに、そっと染み渡る一冊。
それではあらすじ・感想・見どころをどうぞ!!
あらすじ
あなたと共にいることを、世界中の誰もが反対し、批判するはずだ。わたしを心配するからこそ、誰もがわたしの話に耳を傾けないだろう。
それでも文、わたしはあなたのそばにいたい―。
再会すべきではなかったかもしれない男女がもう一度出会ったとき、運命は周囲の人を巻き込みながら疾走を始める。
新しい人間関係への旅立ちを描き、実力派作家が遺憾なく本領を発揮した、息をのむ傑作小説。
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感想・評価 8/10 (ネタばれ注意!)
この本、読後感がとんでもない。
主人公たちの人生が実際にこの世界で息づいていて、今後の人生はどうなるのか小一時間も思索にふけってしまいました(笑)
主人公の更紗は、小学生のころに父を亡くし、それがきっかけで大好きだった母にもネグレクトされてしまう。
叔母の家に引き取られるも、従兄弟から性的虐待をうける。
もう、読んでいて、実際すごく苦しかったです。
更紗の中の救いの手がどんどん絶たれていく感じ。
そこで現れるのがもう一人の主人公、大学生の文です。
2人があるきっかけで、文の家で暮らすことになります。
叔母の家で暮らすのが苦痛だった更紗からすれば文の家での生活は天国でしたが、
これって世間からしたらただの誘拐事件なんですよね。
結局2人は引き離されて、更紗は時の被害者少女に、文は誘拐の犯罪者という身分を背負うことに。
世間からの同情、侮蔑、疎外感。
自分のことを本当に理解してくれるのは、他でもない誘拐犯の文なんです。
世間と自分の感情の不一致が彼女を悩ませますが、2人が出した答えには、一読者であるわたしも救われました。
ネグレクト、性的虐待、小児性愛、DV、ネットでの誹謗中傷。
ヘビーな出来事が常につきまとう物語でしたが、文の壊れそうなほどの優しさにふれて、気が付けばあっという間に読み切りました。
見どころは?
本作の見どころはずばり、「事実と真実の距離感」です。
え? 事実も真実も一緒でしょ? と、思う方もいらっしゃると思います。
しかし、厳密には、違うニュアンスなんですよね。
ここで説明しますと、
事実: 本当にあった事柄。 真実: 嘘偽りのない解釈、考え。
上記の通り、事実は客観的なもので、真実は主観的なものです。
つまり、真実は複数も存在することになります。
[流浪の月]でいえば、作品のキーとなる誘拐事件。
誘拐事件として文が捕まってしまったことは紛れもない事実ですが、
そこで一緒に暮らした真実は、更紗と文にしか分かりませんよね。
一方、周囲の人間や報道を見た人々は、文を犯罪者、更紗を被害者とみる。これもまた、真実。
白い目というものは、被害者にも向けられると知ったときは愕然とした。いたわりという善意の形で、『傷物にされたかわいそうな女の子』というスタンプを、私の頭から爪先までぺたぺたと押してくる。みんな、自分を優しいと思っている。
「流浪の月」第三章より
確かにわたしは傷つけられた。けれど私を傷つけたのは文じゃない。
更紗の中の真実と、世間の真実って、びっくりするほど違っている。
ただ、ぼく自身、もし更紗の近くにいたら、多分世間の人と同じ接し方をしてしまうだろうなぁ。
報道を見ただけでは、2人の関係を推し量ることなど無理でしょう。
それくらい誘拐という言葉は強くて、2人を被害者と加害者に分断させてしまうもの。
そんな状況でも、2人だけが持っている真実を大切にしていく姿がとても美しかったです。
さいごに
いかがったでしょうか。
書店で本を手に取ったときは、恋愛小説かな?と思っていましたが
実際は恋愛から遠い場所にあって、センセーショナルで、悲哀に満ちていて。
それでも愛おしくなる2人の物語でした。
2020年には本屋大賞を受賞し、22年には映画化も決まっている今作品。
ぜひ、[
流浪の月]皆さんもご一読あれ!!
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