今回ご紹介する小説は、「ノルウェイの森」や「1Q84」などで知られる村上春樹さんのデビュー作
[風の歌を聴け ] です!
今や超有名作家の村上春樹さんですが、このデビュー作を書いたのは29歳のとき。
それまではジャズ喫茶をやっていて小説を書いたことがなかったのに、いきなり群像新人賞を受賞してしまうんだから天才ですよね(笑)
夏の終わりにビールを飲みながら読みたくなる一冊。
それでは、あらすじ・感想をどうぞ!
あらすじ
1970年の夏。東京から海辺の町に帰省した”僕”が、いつもビールを飲んで過ごす友人”鼠”と、バーで出会った指が4本しかない女の子と、夏の18日間を過ごす。70~80年代のサウンズとともに、退廃的なモラトリアムのなかに流れるそれぞれの哲学を綴った青春小説。
感想・評価 8 / 10
お恥ずかしながら、今回初めて村上春樹作品に触れました。
なんでしょう、味わったことのない感覚に襲われる。
特段物語性が強いわけではないのに、読んだあと心に必ず引っ掛かりが残るんですよね。
退廃的な文章の切り口が、徹底的なハードボイルドを思わせました。
完璧な文章などといったものは存在しない。
完璧な絶望が存在しないようにね。
あまりにも有名なこの冒頭。
個人的には「吾輩は猫である」や「雪国」にも並ぶ書き出しじゃないでしょうか。
ハルキストじゃないわたしも、冒頭からがっちり心を射抜かれました。(笑)
一文目から、村上春樹さんの死生観や書くことへの哲学が伝わってきます。
主人公の”僕”以外に登場する人物は、バーでよくビールを飲む友人”鼠”と、指が4本しかない気の強い女の子。
その2人だけ(バーの店員のジェイもたまーに出ますが)
この2人が、それぞれホントに魅力的なんです。
鼠は金持ちの出なのに、ずっと金持ちの悪口を言いながらビールを飲む毎日。
まっすぐなんだけど、まっすぐすぎて自分まで見えなくなってしまう女の子。
そして、3番目の彼女を自殺でなくした僕。
物語が進むにつれて、各々が抱えている生と死に対する寂しさ、苦悩がぼんやり見えてくるんです。
一回読み終えたあとすぐに読み直してみると、僕や女の子が語っていた言葉の見え方がぐんぐん変わっていく。
70年代のサウンドをバックに、主人公たちが過ごした夏を遠目でみているような感覚でした。
キラキラした青春小説ではない、遠い物憂げな青春を思い出させてくれる作品。
夏の終わりに、ビールを片手にぜひ読んでみてください!
さいごに、僕が大好きな鼠の言葉を添えて
「ビールの良いところはね、全部小便になって出ちまうところだね。ワン・アウト一塁ダブルプレー、何も残りゃしない。」
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