朝井リョウ代表作! 【何者】感想・レビュー!

小説

今回ご紹介する作品はこちら!

朝井リョウさんの【何者】です!

朝井リョウさんは2009年に「桐島、部活やめるってよ」で小説すばる新人賞を受賞するとそれがベストセラーになり、今作では歴代最年少で直木賞を受賞しています。

その若さに裏付けされた現代の若者の微妙な心理、葛藤を描くのがすごいうまい作家さんです。

就職活動、就活生の歴史にとっても転換点であるSNSの参入。

知りたい言葉が埋もれていて、見たくない言葉が溢れている。

何者かになりたくてもがく就活生たちの苦悩、そして現代人が抱えるナルシズムが見事に描かれた作品でした。
それでは感想・レビューを語っていきます!

また、明日からラインで使える本作フレーズもご紹介しているのでどうぞ!

あらすじ

作:朝井リョウ

1989年、岐阜県生まれ。小説家。2009年、『桐島、部活やめるってよ』で第22回小説すばる新人賞を受賞しデビュー。2013年『何者』で第148回直木賞、2014年『世界地図の下書き』で第29回坪田譲治文学賞を受賞。他の小説作品に『チア男子!!』『星やどりの声』『もういちど生まれる』『少女は卒業しない』『スペードの3』『武道館』『世にも奇妙な君物語』『ままならないから私とあなた』『何様』『死にがいを求めて生きているの』『どうしても生きてる』『発注いただきました!』『スター』、エッセイ集に『時をかけるゆとり』『風と共にゆとりぬ』がある。

新潮社HP著者プロフィールより

『桐島、部活やめるってよ』『何者』で一躍有名になった朝井さん。

 一つのテーマに対し読者を巻きこみ、まるで自分ごとのような読後感を与えてくれるストーリーが魅力の作家さんです。
小説執筆だけでなくエッセイも独自の切り口で支持をあつめています。
2021年3月まで元AKBの高橋みなみさんとラジオ番組「ヨブンのこと」で生の声も届けており、多方面で活躍されています。

あらすじ

想像力が足りない人ほど、他人に想像力を求める。

就活対策のため、拓人は同居人の光太郎や留学帰りの瑞月、理香らと集まるようになるが――。衝撃のラストが襲いかかる戦後最年少の直木賞受賞作。

就職活動を目前に控えた拓人は、同居人・光太郎の引退ライブに足を運んだ。光太郎と別れた瑞月も来ると知っていたから――。瑞月の留学仲間・理香が拓人たちと同じアパートに住んでいるとわかり、理香と同棲中の隆良を交えた5人は就活対策として集まるようになる。だが、SNSや面接で発する言葉の奥に見え隠れする、本音や自意識が、彼らの関係を次第に変えて……。直木賞受賞作。

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感想・レビュー

評価  8/10

次々にページがめくられていく。
読み終えた時振り返ってみると、小さい劇場でやっている劇を見た時の感覚に近いのかな。

主人公の拓人による一人称視点で書き進められ内省的な文章もありますが、何よりセリフが多い。

それに加えて各人物のTwitterの投稿。まるで登場人物たちと時間を共有している錯覚に陥るくらい、みんなが身近にいる存在になっていきました。

本作では就職活動とTwitterを連動して考えている場面が多く、140字に詰め込まれたTwitterの文章や面接時のそぎ落とした自己表現、その中に自分はいるのだろうかとふと考えました。

ラストの展開は衝撃的で、読者にとっても心に棘を投げられたんじゃないでしょうか。

僕自身、自分のなかに住んでいる傲慢さみたいなものを、この本を通して認知することができました。

以下、ネタバレを含みますので、よろしい方は下記のボタンをクリックしてください。

想像力

拓人とルームシェアをする光太郎の引退公演、理香や瑞月の留学からの帰国というタイミングで一同が足並みをそろえてはじめることになった就職活動。

理香の家でともに目標に向かう同志として就活に励みますが、心の中でどうしても相手を認められない、相手の成功を誉められず粗ばかり探してしまう拓人。

就活の時期って、こんな独特な雰囲気が流れていて懐かしいなぁと。(笑)

どこか友人を品定めしている自分がいたり、自分のやりたい方向に向かうだけだと虚勢をはいていても内心は選考の結果に一喜一憂したり。
ただ、社会人を経験していない学生にとって、就活の良しあしが自分の良しあしに直結してしまうんですよね。
後半にもかかってくるんですけど、拓人が言っている想像力が大事
周囲の一挙手一投足に思いを巡らすことは得意になっていくのに、自分の挙動に対しては想像力が欠けてしまう。
今だからこそ、そんなことないよ!!っていろんな場面で登場人物に声をかけたくなりました(笑)

吐き出される本音

十点でも二十点でもいいから、自分の中から出しなよ。自分の中から出さないと、点数さえつかないんだから。これから目指すことをきれいな言葉でアピールするんじゃなくて、これまでやってきたことをみんなに見てもらいなよ。自分とは違う場所を見てる誰かの目線の先に、自分の中のものを置かなきゃ。何度も言うよ。そうでもしないともう、見てもらえないんだよ、私たちは。百点になるまで何かを煮詰めてそれを表現したって、あなたのことをあなたと同じようにみている人はもういないんだって。

瑞月の内定祝いのはずが、隆良や理香の瑞月に対する批判、就職活動全般に関する批判にまで飛び火して言い合いになってしまった際に瑞月が放った言葉。

拓人はいたくこの言葉に共感するんですけど、これ拓人にも全部いえることなんです。

かつてともに劇団をやっていたギンジに対する嫌悪感を並べていますが、かたや自分は点数すら出せていない。
先輩がいっていた、「見えない部分にこそその人の本質が出る」というように、本当はギンジがいる向こう側に行きたいけどプライドや世間体などみえないものが邪魔をして踏み出せない。

それでいて他人を評価する観察者という立場にいることで、自分は何者かになれると心の中でまだ思っている。

そんな拓人の弱さを最後に指摘する理香。
結局Twitterの裏アカウントに悪口を垂れ流してしまう拓人が一番想像力がなかったんですね。

ずっと拓人視点で描かれていると、ところどころ共感していた部分もあって自分の未熟さにも気づかされました。

もう一度読み直してみると、拓人がなんだかんだギンジとリンクした考え方をしていたり、拓人に向けられる周囲からの目線とか…
まったく別の作品なんじゃないかと思えるくらい、見方がぐっと変わります。

最後、面接には苦戦していたものの、自分をさらけだしてみんなとギンジの劇を見に行く決意をした拓人をみると、何者でもない自分を大切にしよう、そう思えた作品でした。

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明日から使えるラインフレーズ!

「それでもすごいよ」

瑞月の友達を拓人が否定的に言った際に言われたひとこと。

もし友達が悪く言われていても、間違っていると思ったときは素直にこう言えるようになりましょう。

コメント

  1. […] 『桐島、部活やめるってよ』や『何者』で一躍有名になった朝井さん。(過去記事で『何者』についての感想も書いています⇒https://light-ocean.net/books/nanimono-review/) […]

  2. […] 『桐島、部活やめるってよ』や『何者』で一躍有名になった朝井さん。(過去記事で『何者』についての感想も書いています⇒https://light-ocean.net/books/nanimono-review/) […]

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