ぼくはよくカフェを利用するが、スタバはあまり利用しない。
生活圏のちょっと外側にスタバが位置しているというのもあるが、それ以上に心理的な障壁が大きい。
スターバックスに対してちょっとした負い目を感じている。
スタバ=オシャレ空間という認識が自分の中にこびりついていて、自分が入ることを拒んでしまう。
入国するのに必要なMacbookを持っていなし、オシャレな髭を生やしてトレンチコートを羽織るという正装もできない。
サイズなんてSMLの規格を超えた異国語でぼくを惑わせる。
…偏見だ。分かっている。以前はそんな雰囲気があったのかもしれないが、今やだれでも行く大衆カフェだ。
過剰な偏見を持つくらいに、なんだかんだスタバを意識していて、本心ではたまに行ってみたいことを自覚している。
そんな高校生のもどかしい恋愛にも似た感情を抱いているところ、遠く離れた友人からこんな連絡が来る。
「ご当地フラペチーノって知ってる?」
どうやらスタバでは47都道府県でオリジナルのご当地フラペチーノを販売しているらしい。
北海道ならとうきびを使用した 「とうきび クリーミー フラペチーノ トール テイクアウト 」
沖縄ならちんすこうを使った 「かりー ちんすこう バニラ キャラメル フラペチーノ」
など、地域の特色に合わせたフラペチーノが期間限定で販売されている。
これが今人気らしい。ただ名前の通りその都道府県でしか飲めないらしく、ぼくが住んでいる地域の
“ご当地”フラペチーノの味の感想が聞きたいと言ってきた。
よし、スタバに行く理由ができたぞ。
すかしながらも心の中で知り合いに礼を述べ、久しぶりのスタバに赴いた。
内装はやっぱりオシャレで、さすがいつも意識している存在だ。
この店の注文は毎回緊張するなと思っていると、担当してくれた店員さんがぼくよりもっと緊張していた。
どうやらかなり新人さんらしい。
恐る恐る「ご当地のフラペチーノが飲みたいんですけど…」と尋ねると、
3秒ほど固まったあと、「ご、ご、ご当地ですね!?」と返された。
はいと答えるとまた沈黙が流れる。「え、ちょっと、待っててください!」と新人さんがバックヤードに戻ると、その店のチーフらしき人が現れた。
「お客様、すみませんがご当地フラペチーノはもう終了しちゃったんですよ。申し訳ございません。」
と、丁重に説明された。
あーぁ、やってしまった。もう存在しないメニューを新人さんに聞いて困らせてしまった。
新人さんの中ではご当地フラペチーノパニックが起きていたんだろう。
僕も僕でご当地フラペチーノにありつけなかったし、困らせてしまったでへこんでいると、
「ご当地は残念ながらないんですけど、こちらがおススメですよ!」
と、言われるがままそのメニューにしてもらった。
それがこちら。
その名も「ほうじ茶&クラシックティーラテ」
ベタベタに甘いものに少し抵抗感がある自分としては、このほうじ茶ラテはさっぱりした甘さで作業の傍ら飲むのにすごくよかった。
先ほどの罪悪感を忘れてスタバを大満足する。
知り合いにはほうじ茶ラテが美味しかったよと伝えると、電話越しにもハテナが浮かんでいるのが伝わってきた。
“ご当地フラペチーノ”パニックを引き起こした加害者に対して、
おいしいほうじ茶ラテを紹介してくれたスタバ。
これからは少しスタバにも足を運ぼうかな。
店員さん、次はちゃんとメニューにあるものを頼みます。
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