[ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー] 感想・レビュー

今回ご紹介する作品はこちら!

[僕はイエローでホワイトで、ちょっとブルー]です!

本書は「本屋大賞2019年 ノンフィクション大賞」などを含む10賞を受賞した大ベストセラーです。

作者のブレイディみかこさんとイギリス人の父を持つ息子が生まれながらにして背負った多様性。

国家全体の政治的な取り組みであるマクロ視点を持ちながらも、近所の子供たちの会話というミクロな世界にも話を広げてあり、本のすぐ向こう側で一緒に過ごしている感覚になりました。

多様性ってなに? 差別ってどこから?

強く、そして思慮深く毎日をいきている子どもたちが描かれています。

それでは感想・レビューをどうぞ!

概要

著者: ブレイディみかこ

ライター・コラムニスト。1965年福岡市生まれ。1996年から英国ブライトン在住。2017年、『子どもたちの階級闘争――ブロークン・ブリテンの無料託児所から』(みすず書房)で新潮ドキュメント賞を受賞。2019年、『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(新潮社)で毎日出版文化賞特別賞受賞、Yahoo!ニュース | 本屋大賞 ノンフィクション本大賞受賞などを受賞。他に、『ワイルドサイドをほっつき歩け――ハマータウンのおっさんたち』(筑摩書房)、『THIS IS JAPAN―英国保育士が見た日本―』(新潮文庫)、『女たちのテロル』(岩波書店)、『女たちのポリティクス――台頭する世界の女性政治家たち』(幻冬舎新書)、『他者の靴を履く――アナーキック・エンパシーのすすめ』(文藝春秋)など著書多数。

新潮社 著者プロフィールより

[ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー] 

人種も貧富の差もごちゃまぜの元底辺中学校に通い始めたぼく。人種差別丸出しの移民の子、アフリカからきたばかりの少女やジェンダーに悩むサッカー小僧……。まるで世界の縮図のようなこの学校では、いろいろあって当たり前、でも、みんなぼくの大切な友だちなんだ――。優等生のぼくとパンクな母ちゃんは、ともに考え、ともに悩み、毎日を乗り越えていく。最後はホロリと涙のこぼれる感動のリアルストーリー。

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もともと著者の息子は、夫の家庭の影響で由緒正しいカトリックの名門校に通っていましたが、中学校の見学会を経て地元の公立校に進学することを決意します。

しかし、そこは白人労働者階級の子どもたちが通う中学で、つい最近までは学校ランキングのどん底に位置していた「元・底辺校」でした。

小さな少年が、多様性とは何かについてキレイごとだけではない現実に直面しながらスクールライフを送るノンフィクションです。

感想

評価 7 / 10

「楽ばっかりしていると、無知になるから」

以前から書店の目立つ場所にディスプレイされていて気になっていた一冊。

ページをめくらなくてもタイトルから
「きっとこれは白人と日本人の両親を持つ少年?の葛藤を描いた作品なんだろう」と予想をつけていました。

自分の良くない点なんですが、どうしてもそういったテーマ性があらかじめ明示されていてそのテーマが深刻なほど遠ざかってしまうんです。

今回はそういった自分はいったん脇に置いて、読んでみました。

あらかた予想通りではあったんですが、純粋にビックリしたこと

読み物としておもしろい。

これから人種差別についての本を読むのか…気合い入れよ!
と思って読み始めたんですが、かなり日常に根差した体験が書かれており、笑いも交えてスラスラ読めました

息子くんから学ぶこと

「ダニエルと僕は、最大のエネミーになるか、親友になるかのどちらかだと思う。得意なことが似ているからね。」

人種差別的な発言をするハンガリー出身のダニエルと演劇を通じて友情がめばえはじめた息子の一言。

なんかこう、詩的でかっこいいですよね(笑)
(まぁ脚色も多少あるでしょうけど)

「でも、どうして僕にくれるの?」
「友達だから。君は僕の友だちだからだよ。」

息子さんの思慮深さは著者ゆずりなんですかね。
中学生だった自分が困っている立場の友人をみたとき、こんなまっすぐな言葉が言えたかな。
当時は分からないけれど、年を重ねた今の自分は、言える自分でありたいなと思いました

わたし自身生活していて思うんですけど、
よく子どもと大人っていう2つの軸で物事を考えることが多いじゃないですか。

ただ、子どもって私たちが思う以上にしっかり地に足をつけて社会を生き抜いています。
本書を通して、背丈は違えど考え方の目線はさして変わらない、むしろ学ぶべき点が多くあるということを改めて知りました

正義の裏にある分断

「僕があそこにいなかったら、きっと生徒会長はあんなことしなかったんじゃないかなって」

黄色人種に対する差別的発言をうけて、息子の近くにいた中国人の生徒会長は怒りを露わにします。

普段だったら冷静で、いくら不当な扱いを受けたとしても暴力で返すような人ではない生徒会長。

息子は、僕が一緒にいたから、同じ東洋人をバカにされたから対抗したんだと言います。

一方とうの息子はいまいち東洋人のアイデンティティを持っていないため、いささか強すぎる仲間意識に対して悩みを吐露していました。

ホワイトであり、イエローであり、またどちらでもない。

ここらへんはすごくリアルだと感じました。
中国人の生徒会長は息子を守るための行動ですが、ときにはそのアイデンティティが東洋vs西洋の構図を加速させてしまいます。

被差別からうまれる過剰な”仲間感”

葛藤しつつも、両方の視点からみれる息子ならではの目線には本当に考えさせられました。

しいて言うならば…

全体的におもしろく、勉強になりました。

が、少し思った点があるとすると、少しご都合主義かなーと。

ノンフィクションとして没頭したい題材だったために、「これって本当にあったの?」と懐疑的になってしまう側面もちらほら。(本当ならごめんなさい 笑)

また、何がキッカケで差別のトリガーを引いてしまうか分からないと主張する一方で、底辺中学としきりにいったり強い言葉が繰り返し使われて、そこは違和感でした。

この本は日本語で出版されてるけど英語で広く出版したら、英国本土では受け入れられない描写があるんじゃないの?

日本語であることをいいことに、書きすぎじゃない?

と思ったりも。
ただ、そこも含めて作者の生々しい文章を感じれるということかもしれません。

さいごに

いかかでしたか?

冒頭でもはなしたように、そこまで意気込まずとも読めちゃう作品。

エンタメを通して多様性を身につける、といった感覚でぜひ読んでほしいです!

コメント

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