高校生のころに見た何でもないテレビ番組を強烈に覚えている。
小中学生の子どもの「しつけ」に関する番組で、色んな問題に対する解決策を提示していた。
ぼくが覚えているのは、夜中ゲーム問題。
どうやら子どもが夜中起きてゲームをしているようだ。
ただ確証はなく、子どもに聞いても白を切られるので、なにかいい方法はないかとのこと。
芸能人がさまざまな回答をする中、しつけの評論家が出した答えは、
「テレビの入力端子のラベルに、手につくインクを付けておきましょう!
ゲームをするのには入力端子をつなぐので、元々ついてる入力端子を抜く必要があります。
そのため、元々付いてる端子にインクを塗っておけば、翌朝確認したときインクが剝がれているかで分かります!!」
というものだった。
んんっ???
これって本当にしつけなんだろうか。
エサでおびき寄せてオーバーキルするネズミ捕りと同じじゃないだろうか。
だいたい、ゲームを深夜にすることを阻止したいはずなのに、インク塗っている時点で、心のどこかによっしゃ指にインクたっぷり付けてやるぜ!!的な気持ちが芽生えてきてないかと思う。
ゲームをしていなかったパターンを想定しても釈然としない。
翌朝インクが付いていない度に安堵して、「あぁ私の勘違いで子どもは本当にゲームをやっていなかったのね、良かった良かった」と世の大人は思わないだろう、ふつう。
みじめになるだけだ。
そんなことを親がしてると知ったら、インクを塗った分だけ子どもの心も真っ黒に染まっていく。
毎朝俺の母ちゃん憑りかれたようにテレビの裏確認してるよ、なんて思われたら確実に何かは損してる。
テレビの端子にインクを塗っている人間よりは夜中にゲームをしている方がはるかにマシだと思うのはぼくだけじゃないはずだ。
どんな番組で誰が出ていたかも覚えていないが、このコーナーだけはそんなことをグルグル考えていたせいでやけに鮮明に覚えている。
もし自分が子育てをする立場に回ったら、賭博黙示録ばりの心理戦を広げるんじゃなく、夜中にゲームをしていけない理由をちゃんとコミュニケーションで伝える親でありたいと思った。
話は少しそれるが、ぼくもよく夜中にゲームをしていた。
あまりゲームをよく思わない家庭だったので(当時の大半の家庭はそうだと思うが)、夜中くらいしかまともにできなかった。
見つかったら当然怒られるし没収もされたけど、そのスリルも込みで楽しかった。
いつも怒ってくるのは母親だったが、たまに父親にもゲームについて怒られた。
「だいたい夜中にゲームすると目悪くなるんだからな!!」
決まり文句のように言ってくる父親は僕たちの前でも平気でスパスパいくヘビースモーカーだ。
理屈じゃ良くないとわかっていても、やってしまうことが人間にはある。
夜中にやるゲームも、部屋を真っ暗にしてみる映画も、子どもの前で吸うタバコも、呪文のようなコールを唱えるラーメン屋も全部、からだに悪いことなんて分かってる。
それでもやっちゃうし、楽しいし、やめられない。
それでいいと思う。
なんだか最近そういったことをあまりしてない。
ちょっと悪くて猛烈に楽しいこと、たくさんしていきたい。
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